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【SF名作紹介】『魔法科高校の劣等生』で考える「科学」と「魔法」

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今回はシリーズで初の日本の小説、しかもネット小説発のライトノベル『魔法科高校の劣等生』を取り上げたいと思います。

この『魔法科高校の劣等生』は書籍の第1巻が発売されてから約10年たった2020年にようやく完結しました!

日々の楽しみが一つ減ってしまって残念ですが、完結した記念として紹介していきます。

これが「SFなのか」とか「名作なのか」という判断は難しいですが、この作品で語られる「魔法」は普通のファンタジーとは異なった科学的なものです

まあ、いわゆるライトノベルに抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、僕が夢中になった『魔法科高校の劣等生』の魅力を語っていきたいと思います!

そして後半では科学技術の発展と魔法の関係について色々と紹介していきます。

ストーリー紹介

というわけで、まずはストーリーを簡単に紹介していきます。

ネタバレしようにも全部で30巻近くあるので無理ですのでご心配なさらず。

ストーリーはシンプルです。

  1. 主人公は魔法を学ぶ学校に劣等生として入学する
  2. でも実は主人公は本当に絶句するぐらい強い
  3. 学校生活を送りながらも世界規模の混乱に巻き込まれていく

という話です。

主人公がなぜ劣等生なのかというと、主人公は普通の魔法を使えないからなんです。

でもその代わりに、

  • 構造のあるものなら何でも分解する魔法
  • 24時間以内なら何でも元に戻すことができる魔法

を使えるという。

何でも元に戻せるのは自分の体も含まれているので主人公は

敵の身体を一瞬で分解したり、魔法そのものを分解して無力化する一方で自分の身体が破損しても一瞬で元に戻ります。

でも評価されるのは普通の魔法だから、劣等生という扱いを受けているわけですね。

「何が劣等生なんだよ! その2つだけで強すぎだろ!」

と思ったそこのあなた、大丈夫です。読者の100%は同じことを思ってます。

まあ劣等生として周りに蔑まれている主人公の本当の力が明らかになっていく、という構造がこの作品のカタルシスとなっているわけですね。

ただ、後半になると主人公が強すぎて、しかも読者がそれに慣れてしまう事態が発生します。笑

実際、主人公の魔法は国の一つや二つを一撃で破壊できます。

魔法を理論的に体系化

ここからが本当に語りたい部分です。

主人公がチート過ぎるのは置いておいて、僕は魔法というファンタジー的なものを科学的に説明している部分に非常に魅力を感じました。

魔法といえば、杖を振ったり呪文を唱えたりして物を動かしたり、炎や水を出したりする、というイメージがあると思います。

しかし、冷静に考えるとおかしいわけです。

魔法の発動前後のエネルギーは保存されているのか、とか

呪文を唱えることによってどんな過程を経て魔法が現実世界に影響するのか、とか。

「細かいことはいいじゃないか、それがファンタジーだ」と言われればそれまですが、SF好きからしたら説明が欲しいわけです。

でも『魔法科高校の劣等生』ではそこを体系的に説明しています!

ちょっと複雑ですが簡単に「科学的な魔法」を解説していきます。

まずこの作品において、魔法とは

情報次元の情報そのものに干渉し変更することで現実世界の事象を変更させる

というものです。

そして事象改変は熱力学第一法則の制限を受けますが、熱力学第二法則の制限は受けません

熱力学第一法則はエネルギー保存則とも言われます。

熱力学第二法則も様々な表現がありますが、低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に、他に何の変化もおこさないようにすることはできない、というものです。

自分で書いてても難しいですね。例えば、魔法でボールを真っすぐ飛ばす場合を考えてみます。

現実世界ではボールは丸い物体ですが、これを情報次元から見てみるとボールというのは

  • 位置の座標
  • 大きさ
  • 素材
  • 運動量
  • 質量

などの情報で構成されています。

魔法というのはこの情報を改変することなんです。

なので、真っすぐに飛ばす場合は進行方向に運動量を与えるように情報を変更すれば現実世界ではボールが真っすぐ飛ぶという物理現象が引き起こされるわけです。

その運動に必要なエネルギーは別に供給する必要がありますから、この場合は周りの空気中の分子の熱エネルギーを利用することになりますかね。

なので、鉛を金に変えることはできません。

このようにファンタジーというよりも物理や化学的な発想で魔法が組み立てられているんですよね。

そうやって、ある程度物理法則に縛られているが故にバトルシーンの描写もある種のリアリティを感じられる、というのもポイント高めです。

今回説明したのは魔法理論の一部を簡略化したものです。

実際はもっと緻密な理論が組み立てられています。興味のある方はぜひ原作を読んでみてください。

30巻以上ありますけどね。

錬金術は科学か、それとも魔術か

はい、小説の話はまだいくらでもできるんですが後半に入りたいと思います。

基本的には魔術や呪術、魔法、科学でも、ある現象に対する説明を体系化させたものである点は同一です。

実際、古代ギリシアでは非常にレベルの高い自然科学が発展しました。

ただ、ローマ帝国の崩壊でヨーロッパにおける科学は断絶してしまいます。

その後中東のイスラム圏で科学は発展を続け、ルネサンスぐらいにヨーロッパに逆輸入されます。

そんな感じで科学は歴史を通じて発展してきたわけですが、中には魔法のようなものも存在していたわけです。

その代表が錬金術ですよね。

卑金属を貴金属にする賢者の石を生み出そうと多くの人が挑戦していたわけですけど、どうも「科学」よりも「魔術」というイメージが強いですよね。

どうしてなのか、ということなんですけど。

錬金術は実験で使った材料だったり、条件だったりを秘匿する傾向が強かったんです。

新しい技術も仲間内だけで独占したりしてました。まあ、その方が儲かったんでしょうね。

そのため、出版される錬金術の本も内容があやふやな場合が多かったんです。

また、この頃の学者たちは占星術とかを本気で信じていましたから、「材料を取りに行く日は月の満ち欠けがどうのこうの」みたいなこともありました。

まあ、他の人が同じ実験をして失敗したときに言い逃れするためだったりするんですけどね。

そんな得体のしれない感じが魔術的なイメージを生んでいるのかもしれないですね。

交感の科学

最後に錬金術から化学への過渡期のエピソードを一つ紹介します。

ファン・ヘルモントという最初の化学者ともいわれる錬金術師が17世紀頃にいました。

このヘルモントは「交換の粉」というものを信じていました。

そしてこの「交換の粉」の効果については本人の『使用法』を見た方が速いです。まとめると次のような感じです。

使用法

ハウエル氏は決闘の仲裁をしたときに腕に重症を負ってしまい、それが原因で死にかけていました。

そこに現れた錬金術師が「ローマのヴィトリオール」という粉を、傷を受けたときに初めに使った血染めの包帯に振りかけました。

まあ正体はただの硫酸銅の粉なんですけどね。

そうすると、医者にも手に負えなったのに、傷の血と体内の血が「交感」して傷が治ってしまった

というものです。

本当に魔法みたいですよね。まあ、あり得ないでしょうけど。

ですが、ヘルモントは「交感」を本気で信じていたわけです。

またヘルモントは「交感」の別の使い方も紹介しています。

別の使い方

はい、あなたの家の前で誰かがうんこをしたとします。

もちろんあなたはブチ切れますが犯人は分かりません。

さあ、ここで「交感」の出番です!

この「交感」を使えば簡単に犯人にやり返すことができます!!

ではまず、家の前のうんこに「交感の粉」をふりかけます。

次に、そのうんこに熱く熱した鉄を押し付けましょう。

そうすればなんてことでしょう!

交感の力によって犯人の肛門は熱せられ、肛門は燃えるような熱さに襲われます!

これで復讐達成ですね!

と、こんな感じです。

まあ、もしあなたの家の前で誰かがうんこした時はやってみてください。笑

まとめ

今回は前半は『魔法科高校の劣等生』について語って、後半では魔術と科学のはざまにある錬金術について紹介しました。

「交感」の話のように錬金術は正しいとは言えないようなこともまかり通っていましたが、その時代の様々な研究が今の科学の土台になっているのも事実です。

十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない

SF作家アーサー・C・クラークの言葉です。

そう考えると、科学と魔法は同じ存在を別の視点から見ただけなのかもしれないですね。

最後に『魔法科高校の劣等生』完結おめでとうございます!





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