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【SF名作紹介】『三体II 黒暗森林』で考える「フェルミのパラドックス」

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―――猜疑連鎖と技術爆発

この記事はこちらから音声で聞くことができます。

今回は以前紹介した『三体』の続編です!

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この『三体』シリーズの内容を一言で表すなら「宇宙人との戦い」です。

そしてこの『黒暗森林』では「フェルミのパラドックス」がテーマとなっています。

というわけで紹介に移ります。

ストーリー(あらすじ)

フェルミのパラドックスについて語る前に、あらすじに関してさらっと触れます。(前作のあらすじを読んだ前提で説明します)

本の帯に書かれてる内容+αくらいの説明です。

前作では、三体艦隊が地球に向けて出発し、さらに地球の技術発展を妨げるために「智子」という最強粒子が先に送り込まれた、ということでした。

三体艦隊が地球に到達するまで約400年ですが、それまでに対抗策を考えなければいけません。

しかし「智子」のせいで物理学の基礎理論や量子コンピュータなどの技術開発ができないと。

しかも「智子」のせいで研究内容や作戦なんかも相手に筒抜けになっています。

紙に印刷された内容、口に出したこと、インターネット上に書き込んだもの全てが筒抜けです。

しかし、その超ウルトラスーパーやばい「智子」にも弱点があります。

それは人間の思考を読むことはできない、ということです。

というわけで「面壁計画」がスタートします。

これは「面壁者を選んで、その頭の中だけで作戦を考えれば敵にバレないじゃん」というものです。

面壁者はかなりの権限を与えられ、さらにその指示に対する説明義務はないわけです。

そして4人の面壁者が選ばれ、それぞれ行動していきます。

そこで『黒暗森林』の主人公の羅輯(ルオ・ジー)が辿り着いた結論が「フェルミのパラドックス」に対する回答でもあったわけです。

「フェルミのパラドックス」とは

はい本題です。

さっきから「フェルミのパラドックス」を連呼してますが、そもそも「フェルミのパラドックス」って何?と言う人も多いと思います。

名前くらいは聞いたことあるかな?

というわけでまずはこのパラドックスの解説をしていきます。

フェルミのパラドックスを一言でまとめると、

絶対宇宙人はいるはずなのに、なんで見つけられないんだろう?」というものです。

宇宙には膨大な数の恒星があって、その惑星の何%かには知的生命体が誕生しているはず。

しかも宇宙が誕生してから137億年経っているのだから、地球よりもはるかに発達した文明がたくさんあっても何ら不思議ではないわけです。

逆に地球以外に知的生命体が存在しないと考える方が無理な話です。

まあ、重元素の有無や宇宙線の影響とかも考慮すべきですが、それでも0とは考えにくいですよね。

超高度な科学技術を持った宇宙人がいるなら、地球を見つけて接触しに来てくれてもいいんですけどね。

てな感じに矛盾しているのでパラドックスと言われています。

その解答としてよく言われるのが

  1. そもそも宇宙には地球人類以外に知的生命体は存在しない
  2. もう既に接触しているが政府が隠蔽している
  3. 宇宙人は存在するが恒星間を突破し地球に辿り着くだけの技術を開発できない
  4. 宇宙人は存在するが、なんらかの制限又はある意図のためにまだ地球にやってきていない

ですかね。

1は説明不要ですね。いないものは来ない。

2はよく陰謀論やら都市伝説で取り上げられるものですね。

3については技術的な問題です。

宇宙は広大です。太陽に最も近い恒星でさえ光の速さで4年かかる距離です。

人類が太陽系の外に送り出した探査機ボイジャーでさえ速度は時速6万キロくらいで、光の速さ秒速30万キロには遠く及びません。秒速ですよ。

てな感じで恒星間を実用的な速度で移動しようとするなら、光速か光速以上の速さで移動しなければいけないんです。

人類の物理理論では光速を超えることはできない、ということになってますから想像もできないほどの高度な技術が必要なわけです。

4は動物園仮説なんて言われたりします。

実は宇宙の文明はもう既に社会を築いていて、あまりにも未熟すぎる地球文明を保護するために地球には干渉しないという取り決めがなされている、という話です。

そしてこの4の解釈の一つがこの『黒暗森林』で示されている答えになります。

宇宙は「黒暗森林」だった

それではこの『黒暗森林』の核心を解説していきます。

宇宙社会学とは文明同士がどんな行動をとるかを考える学問です。

社会学が人間がどんな影響を与え合っているかを考えるのと同じようなものです。

そして主人公の羅輯はこの宇宙社会学を用いて、圧倒的に強い三体人を出し抜きます。

その方法とは、三体世界の位置情報を全宇宙に向けて発信する、というものです。

「だから何?」となりますよね。

それではまず、宇宙空間にAとBという文明しか存在しないと仮定します。

そしてAはBの存在を探知しましたがBはAの存在を知りません。

ここでAはBと連絡を取ろうとしますが、少し考えます。

もしBと連絡を取ろうとすればBにこちらの位置を晒すことになる。もしBが攻撃的な文明だったらこちらの文明が滅ぼされるかもしれない

それでも、Bが心優しい文明だと期待してコミュニケーションを取ったとします。

ではAの発信を受け取ったBの視点で考えてみます。

Bからしたら
なんかAっていう文明がコミュニケーションを求めてきた、けど応答したらこちらの位置を晒してしまう」となります。

文明が発展するには資源が必要ですが宇宙の資源量は一定です。なので資源の奪い合いが起こるのは必然になります。

文明が発展すればするほど、心優しい文明であることは文明の生存を放棄することと同じです。

なのでコミュニケーションを始める段階でAが心優しい文明かなんて判断できないわけです。

それなら、交信してみてAが心優しい文明だったら交流を続ける
攻撃的な文明なら滅ぼされる前にAを滅ぼせばいい、となりますよね。

ここで猜疑連鎖という概念が登場します。

BはAが心優しい文明か分からない。

だからAは BがAを心優しい文明だと思っているかどうか分からない。

だからBはAはBがAをどのように考えているのかを考えているのかが分からない。

みたいに疑いが連鎖してしまうと。

人類同士ならばコミュニケーションで解決できるんですが、舞台は宇宙です。

AとBは非常に離れていて、なおかつ全く別の生命です。生物学的にはヒトと海藻なんかよりも離れているかもしれません。

そんな状況下では、コミュニケーションで解決される前に争いが起こってしまうと。

つまり文明が攻撃的だろうと心優しかろうと、疑いの連鎖に陥ってしまうということです。

でもBがAよりもずっと弱ければ、Aは安心してBとコミュニケーションできるではないかと。

ここで技術爆発という概念が登場します。

科学技術は宇宙の時間的スケールから見れば一瞬で発展します。

現在の科学技術だってこの300年くらいで発展させたものですよね。

となると、AがBとコミュニケーションを取った時点ではBがザコだったとしても、Bに技術爆発が起こってAより強くなってしまうかもしれない

しかも、Aとの接触がBの技術爆発の引き金を引いてしまうことも考えられると。

なら、AはBを探知しても交信しないのが賢明だと思うかもしれません。

しかし、それでも問題の解決にはならないんですねー。

AがBを探知できたという事はいずれBもAを探知できるようになるということです。

というわけでAは

  • Bに自分の存在を知らせる
  • Bが存在し続けることを許す

このどちらも自分の文明の存在を脅かすことに繋がります。

なら残る手段は1つしかないですよね。

探知した瞬間に文明を攻撃し消滅させるんです。

ではこれを宇宙全体の数億の文明に適応させましょう!

となると宇宙は自分の存在が知られた瞬間消滅させられるえげつない世界になります。

まるで暗黒の森の中で狩人たちが息をひそめながら最大限の注意を払い続けているみたい、ということで『黒暗森林』なんですね。(タイトル回収)

これが「フェルミのパラドックス」の答えです。

Q.なぜ人類は宇宙人を見つけられないのか?
A.自分の存在を知らすことは自らを消滅させることになるから

ということで話を戻して、三体世界の位置を全宇宙に発信する、と三体人を言いくるめたんですね。

まとめ

というわけで「フェルミのパラドックス」について語ってきたわけですが、なかなか面白い解釈ですよね。

宇宙人とのコミュニケーションはどうしても人類同士と同じようにできる、と思い込みがちですが、実際全く別の生命ならばコミュニケーションは格段に難しいですよね。

ともなると、人類は宇宙人と遭遇しない方が幸せなのかもしれないですね。

今回は三体『黒暗森林』の一部を取り上げましたが、これ以外にも頭脳戦エンターテインメント要素もあって非常に面白いです。

この記事が『黒暗森林』の理解の助けになれば幸いです。





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