
今回は映画『帰ってきたヒトラー』のレビューをしていきたいと思います。
どんな映画かを超ざっくり説明するとヒトラーが現代ドイツにタイムスリップしてくるという話です。
ヒトラーというと極悪非道な独裁者というイメージがあって関わりづらいイメージがあるかと思います。
ですが、かつてヒトラーがやった事を肯定する作品ではないので単純なコメディとしても十分に楽しめます。
とは言え、歴史や現代の社会問題といった背景を知っていればより楽しめます。
映画を見た後でも新たな気づきがあるはずです!
ヒトラーの人物像
ヒトラーと言えば、天才的な演説力でナチスを率いて第二次世界大戦を起こした張本人です。
ユダヤ人を虐殺したりと人種差別的な考えがあったのも事実です。
文字通り悪の象徴として描かれることが多い人物です。
ヒトラーは第一次世界大戦に従軍後にナチ党(ナチス)の指導者として、アーリア民族を中心とした人種主義と反ユダヤ主義を掲げた政治活動を始めます。
ちなみにヒトラーは青年のころ画家を目指していたんですが、美術学校の入学試験に落ちてかなりショックを受けたそうです。
自分が落ちたのはユダヤ人のせいだと思ったことがユダヤ人に恨みを持ったきっかけだとか言われたりしています。まあ噂ですけどね。
そして、その圧倒的な演説力でドイツ国民の心をわしづかみにして合法的に首相になりました。
それから色々と反対勢力を弾圧しまくって独裁体制を築き上げました。
それ以後はユダヤ人や身体障がい者、同性愛者などを差別し弾圧する政策を取りました。
人種差別的な思想は猛烈に批判されていますが、その演説力に関しては疑いようのないものだったと言われています。
社会背景
なぜこの映画がパロディとして面白いのかというと、現代ドイツと戦前のドイツで似たような状況であるとも言えるからです。
そもそもドイツは第一次世界大戦で敗北しています。
その結果
- 天文学的な額の賠償金を科せられる
- 海外植民地は全て没収
- ヨーロッパのドイツ領も結構奪われる
- 軍隊の規模も制限
- 賠償金支払いが遅れたとかで工業地帯も奪われる
という感じになりました。
さらに世界恐慌によって経済がボロボロになります。失業率が40%とか。
そりゃ国民の不満もたまります。
そんな中で超カリスマなヒトラーがユダヤ人という敵を作り出すことで国民の心を掌握します。
一方で現在のドイツも実は色々と問題があります。
それが移民問題です。
現在、ドイツ国民の19%が移民の背景を持っています。
最近でもシリア難民を積極的に受け入れていますよね。
移民はどんどん増え続けていますが、”ドイツ人”は少子高齢化の影響で減っています。
そして、移民の学校中退率や失業率、犯罪率も高い傾向にあります。生活保護を受けている移民が多いのも実情です。
ドイツ人からしたら「なぜ、我々の払った税金で問題を起こす移民に生活保護を与えなければいけないのか」と思うのも無理はないと思います。
とは言え、積極的に移民を受け入れてきたことが戦後ドイツが成長できた要因の一つであるのも事実なんですよね。
なぜ、ドイツがここまで移民を受け入れるのかというとナチスドイツが行ったことを深く反省しているからです。
ナチスドイツがやった人種差別は絶対に許されない、というのを徹底的に教育されるわけです。
個人的にはナチスはドイツでいわゆる”タブー”になってる印象を受けます。
かつての日本の植民地支配を正当化することが社会的に難しいのと同じ感じです。もっとひどいかも。
なので、現代ドイツは移民を快く思っていなくても過去のことがあるから表立って声を上げられないという状況だったりします。
国民の不満がたまっている状態はヒトラーが登場したころのドイツと少し似ています。
そんな現代にヒトラーが現れたら? というのがこの作品の見どころの一つになっています。
それにしても、ヒトラーのやったことを反省したことでヒトラーが登場したときの状況に近づくなんて、とんだ皮肉ですね。
例の「総統閣下シリーズ」ネタまで
ネット界隈では俗に「総統閣下シリーズ」と呼ばれるネタ動画が存在します。
映画『ヒトラー ~最後の12日間~』でヒトラーが部下らに怒鳴り散らすシーンに全く関係ない日本語字幕を付けただけの動画です。
こんなやつ
他にも時事ネタやアニメを語ったりと色々あります。
そして、同じシーンが『帰ってきたヒトラー』にもあります。
そのパロディが最高すぎる、というそれだけの話です。
ちなみに、元ネタとなった『ヒトラー ~最後の12日間~』は敗戦直前のドイツを舞台にした評価の高い作品となっています。
まとめ
というわけで『帰ってきたヒトラー』をより楽しめる背景やネタなんかを紹介しました。
単なるコメディかと思いきや、ヒトラーという存在に対してどうやって向き合っていくかが問われているような作品です。
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