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――あなたたちに侵略される必要があるほど我々の世界は腐っている
というわけで今回は劉慈欣さんのSF小説『三体』を紹介していきます。
「最近話題になっていたのは知ってるけど、内容はよく分からない」とか
「SFって専門用語ばっかり出てきて難しいんでしょ」と思っているあなた、
大丈夫です。
今回は内容をかみ砕きまくって、離乳食レベルまでにして伝えていきます。
赤ちゃんでも食べれるくらい。
『三体』の内容を一言で表すならば宇宙人と人間の戦いです。
はい、話題になったのにはいくつか理由があるのですが、一番の理由は、この『三体』は中国の小説だから、という点です。
ここなんです。
普通SFと言えば、アメリカとかヨーロッパのイメージがありますよね。日本もありますが。
そんな中で、レベルの高い作品が出てきたということで話題になったんですね。
ただ中国にSFが生まれたことは、実は別の一面もあるんです。
作者の劉慈欣さんはインタビューで
「SFは先進国の娯楽だ」
と語ってるんです。
十分にその国の科学技術が発達して、国民の科学に対する理解が高まって初めて、SF小説の読者が生まれる、ということです。
確かに、「ロボットって何?」っていう人に、人間vsロボットの戦いがテーマの作品は楽しめませんよね。
ということはです。
この『三体』の登場が何を表しているかというと、
中国の科学技術が発達して、国民の教育レベルが高まってきた
ということを表しているんです。
そして、SFにはその国の科学技術が如実に反映されていると。
こう見るとSFっていうジャンルが面白くないですか?
これから、どこか東南アジアとかアフリカ発のSFも出てくるんですかねー。
とまあ、三体に話を戻していきます。
ということで、どんなストーリーを分かりやすく紹介していきたいと思います。
ストーリー(あらすじ)
では登場人物から紹介していきます。
登場人物はいっぱいいるのですが、この2人だけ頭に入れておいてください。
- 葉文潔 天体物理学者(女性)
- 汪淼 ナノマテリアル開発者(男性)
この葉文潔のお父さんも理論物理学者の大学教授で、お母さんも大学の教員という、いわば超インテリ家族なんです。
ただ、とんでもない不幸が家族に降りかかります。
それが文化大革命です。
なんか聞いたことはありますよね。
文化大革命というのは、超絶簡単に説明すると、毛沢東の指示のもとで労働者たちが知識人たちを集団リンチしたという出来事です。
文化大革命は現代中国の黒歴史です。興味がある方は自己責任で調べて下さい。
本当に悲惨です。
で、葉文潔のお父さんはリンチに遭って死亡、お母さんは精神が狂いました。
生き残った葉文潔も地方に飛ばされて労働に従事することになるわけです。
ただ、葉文潔って知識人なんです。
そこで友人から外国の本を受け取るんです。
もちろん、当時の中国は文化大革命は収まってはいたものの、共産党のガチガチの独裁時代です。バレれば命の保証はありません。
けれども、その友人が捕まってしまうんです。
で、その友人が本の事を含めて色々と罪に問われるわけですよ。
そして、その友人がその罪を全部葉文潔にかぶせたんです。
「全部あいつの指示だ」って。
しかし、文潔の専門的な知識の見込まれて、国の極秘科学プロジェクトに協力することを条件に罪をなかったことにする、と告げられます。
で、しぶしぶ参加します。
このプロジェクトは中国共産党の軍事プロジェクトで
- 物理学
- 生物学
- コンピュータ科学
- 地球外生命体の探査
が取り扱われていました。軍事的に有用性が高い分野です。
そんなこんなで、秘密裏に宇宙人と交信することに成功してしまいます。
その宇宙人は「応答するな!応答すればあなたたちの星の場所が特定されて、侵略されてしまう」とのメッセージを送ってきました。
この宇宙人は、その宇宙人らの中でも特殊な平和主義者だったのです。
ここで応答しなければいいものの、文潔は「あなたたちに侵略される必要があるほど我々の世界は腐っている」と返信します。
文化大革命で父を失ったことや中国社会を目の当たりにして、そう思ったのかもしれません。
とまあ、葉文潔という人はこんな人なんです。
そして、時は現代。ここにきて汪淼が登場します。
この汪淼はナノマテリアル開発者です。
ナノマテリアルは簡単に言うと「軽くて強い素材」です。カーボンナノチューブとか。
それは置いておいて、現代で不可解な事件が発生します。
著名な科学者たちが短期間のうちに自殺していたんです。
で、中国当局が汪淼に調査の協力を要請します。
というのも<科学フロンティア>という組織が事件と関係がありそうだと目星をつけていたので、科学者である汪淼に潜入調査をさせたかったんです。
<科学フロンティア>という組織は国際科学組織で、科学・オブ・科学な組織です。はい。
そこで、汪もたくさんの不可解な出来事に巻き込まれていきます。
なんやかんやあって、その不可解な出来事が宇宙人の仕業だということが明らかになっていきます。
この宇宙人の文明が三体文明です。(タイトル回収)
この宇宙人の太陽系は太陽が3つあります。だから三体。
この星は太陽から一番近い星がモデルになっています。
普通、物体が2つの場合はお互いの引力による動きが計算で予測できるのですが、物体が3つになると不規則な動きをします。カオス!
太陽と地球で考えると、地球が太陽の周りを一年で回っていますよね。
ただこの三体人の惑星は滅茶苦茶変な動きをします。
なので、太陽が昇ってきたと思ったら、次の日は太陽が昇ってこないとか、
と思ったら、太陽がめっちゃ近づいてくる、みたいな感じです。
灼熱地獄になったかと思えば極寒になって、それがいつまで続くか分からないという状況です。
地球では考えられませんよね。
だから、三体人は何百回もの滅亡と再生を繰り返して進化してきたんです。
この3つの太陽の動きを予測する、それだけを目指して生きてきたわけです。
ゆっくりとゆっくりと文明を発展させました。
そしてついに、答えを見つけてしまいます。
3つの太陽の動きを予測するのは不可能だ、と。
さらに、いつ太陽に飲み込まれてしまうかも分からない状況だということが分かります。
ということで、他の惑星への移住を考えることになります。
そこで、地球からのメッセージが届くわけです。葉文潔が送ったやつ。
三体人からすれば、渡りに船です。
広い宇宙の中で一番近い星に理想の星が存在している。
さあ、これは地球に移住するしかない!となった三体人ですが、地球人をどうするかの問題が発生します。
色々考えた結果、地球人は滅ぼすしかないわ、となりました。はい。
そして、地球に向けて大量の宇宙船が出発しました。
いやー、地球がピンチ!!
なんですが、ある三体人が重要な事実に気づいてしまったのです。
地球の文明史を確認しましょう。
狩猟採集時代から農耕時代までは十数万年。
農耕時代から産業革命までは数千年。
産業革命から電気時代までは二百年。
電気時代から原子力・情報化時代までは数十年かかりました。
はい、地球の文明は加速度的に発展しているのです。
ところで、三体人の宇宙観隊が地球に到着するのは450年後です。
「あれ?これ艦隊が地球に到着する頃には地球の方が科学技術が進んでるんじゃね?」
征服どころか返り討ちにされるやないかーい!!
三体文明はゆっくりと地球文明よりも遅いペースで発展してきたのでね。
で、三体人は考えました。
「何とかして、地球文明の発展を食い止めるしかない」と。
そうして、地球で秘密裏に結成されていた、三体文明に協力する組織の三体協会と協力しながら、ある「モノ」を送り込みます。
それは原子2個です。光のスピードで地球に送りました。
「は?何それ」と思うかもしれませんが、なんとこの原子、知性を持っていて色々出来てしまうんです!
詳しい説明は省きますが、とにかく色々出来ます。三体人の科学技術の粋を集めたものです。
瞬間移動したり、人間に別の景色を写したり、もちろん地球人には感知できません。
それで、地球の科学実験を妨害しまくりました。
実験結果が意味不明なものになれば、科学は進歩しないだろ!という寸法です。
実験結果がおかしくなりすぎた事が科学者自殺の原因の一つです。
電卓で1+1を計算したら、1回目は3になって、2回目は20になって、3回目は9になったら、気が狂いますよね。もちろん電卓には何の問題も無い場合ですよ。
それで、先ほど挙げた三体協会を襲撃して、その組織をぶっ壊して、さあこれからどうしましょうか。
という感じで終わります。
まとめ
はい、続きがとても気になります。
この『三体』は3部作の1作目です。なので、中途半端な終わり方をするんですね。
ということで、話をざっくりまとめると、
- 宇宙人と連絡取れちゃった
- 宇宙人が地球に艦隊を差し向けた
- 艦隊が到着するまでに、地球がえげつないほど発展してしまうぞ!
- じゃあ、科学実験を妨害するしかないわー
という感じです。
まあね、普通に面白いよ。うん。ていうか早く続きが読みたい。
ありがちな宇宙人とのファーストコンタクトものですが、宇宙人が人間臭いのがいいですね。
この記事の内容は大幅に簡略化したものです。実際に読んでみると、想像の3.14倍くらいは面白いです。
SFの中でも比較的読みやすい部類だと思います。
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